2016 年 11 巻 2 号 p. 502-515
筆者の3人は,広島大学大学院の分野融合型のリーディングプログラムであるたおやかプログラムにおいて,現地研修の企画,実施を担当してきた.筆者らは,ともに地理学を学問的バックグラウンドとしてもっている.本稿では,地理学で培われた地域への視点や調査法が,分野融合型教育における現地研修にどのように貢献し,そして実施後にいかなる課題が残されたのかを考察した.検討の結果,事象を地域内の文脈でとらえ,さまざまな要素と関連づけて地域を総合的に把握する視点や,現地調査でオリジナルなデータを得る方法などが研修にも有効であった.また,これまでの地理学的研究では控える傾向があった,地域内の現象の比較的早期の一般化や,課題を解決するための具体的提案も研修という見地から学生たちに積極的に行わせた.今後は,長期間にわたって地域に繰り返し足を運び,さらに研究を深めることや,より長期の現地研修と効果的に結びつけることが課題である.