ブラジル北東部には熱帯乾燥林のカーチンガが分布する.本研究では,ペルナンブコ州ペトロリーナ近郊のカーチンガを対象に,フェノロジーと立地環境の水分条件との関連性を検討した.その結果,カーチンガ構成樹木の葉フェノロジーは水分条件の季節変化とよく対応しており,カーチンガ構成樹木は雨季開始直後のわずかな水分条件の変化に素早く応答して展葉していた.その後2週間程度で成熟した林冠が形成されており,カーチンガ構成樹木は不規則な降水に適応した生活史を持っていた.落葉は雨季の終わりから徐々に進行しており,カーチンガ構成樹木は樹体内の水分状態を調整することで,乾季の高い水ストレスの中でもしばらくは生産活動を継続するものと推察された.これらの結果から,水分条件に敏感に応答する葉フェノロジーにより,カーチンガ構成樹木は半乾燥域の限られた水資源を効率よく利用できていると考えられた.