日本の女性を取り巻く社会的・経済的状況は過去数十年の間に急激に変化した.そうした変化の一端は,働く女性の増加を意味する「労働力の女性化」に現れている.とりわけ大都市圏ではシングル女性が増大しているが,それは職業経歴の中断を避けるために結婚を延期している女性が少なくないことの現れでもある.この傾向は,1986年の男女雇用機会均等法の成立以降,キャリア指向の女性の労働条件が改善されたことによって促進されている.その結果,日本の女性のライフコースやライフスタイルは急激に変化し,多様化してきた.筆者らの研究グループは,居住地選択に焦点を当てて,東京大都市圏に住む女性の仕事と生活に与える条件を明らかにすることを試みてきた.本稿は,筆者らの研究成果をまとめた著書『働く女性の都市空間』に基づいて,得られた主要な知見を紹介したものである.取り上げる主要な話題は,ライフステージと居住地選択,多様な女性のライフスタイルと居住地選択,シングル女性の住宅購入とその背景である.