本稿は,海外フィールドワークによる地理的知の還元の1つのモデルとして,大学地理学教育への還元を提案し,その課題をラオスにおける実践例に基づき検討した.市場経済化にともなう土地利用計画の変化や観光化を受けて,ラオス国立大学ではGIS(地理情報システム)や地誌教育のニーズが高まっている.GIS教育への還元において筆者らは,単にコンピューターの操作や地図情報の提供ではなく,地図を作成するプロセスを重視し,ラオス農村で自ら用いたGPSによるデータ作成法を教員らと実践した.地誌教育においてはフィールドワークの成果に合わせて日本の農山漁村の問題も提示するなどの工夫により,調査する側とされる側の双方の研究教育機関による地理的知の創造を目指す必要がある.