2013 年 8 巻 1 号 p. 59-65
沿岸部に岩塊を馬蹄形や半円形に積んで構築された大型の定置漁具がある.これは一般に石干見(イシヒビ)と呼ばれる.石積みの高さは,満潮時には海面下に没し,干潮時には干あがるように工夫されている.上げ潮流とともに接岸した魚群の一部は,退潮時,沖へ逃げ遅れて石積み内に封じこめられ,それらが漁獲される.小論は,筆者が近年調査対象としている九州・沖縄の石干見を事例に,各地で進む復元および保存と活用をめぐる動きの中で,地域が地理学者に対してどのような知識を求めたのか,このような活動に関わるにあたって地理学者はいかなる立場に定位できるのかについて,若干の考察をおこなうものである.