本研究は,沖縄県を対象として,当該地域の漁業活動で対象とされていない魚種の流通・消費を取り上げて,地域の食卓への普及過程とその背景,販売・消費活動の展開や地域的特徴を明らかにすることを目的とする.遠洋漁業用餌のサンマの一部が1950年代末から食用に転用され,1960年代には琉球の業者が食用商材を本土から集荷を開始していた.日本への復帰を契機に,本土の業者も流通に参入し,本格的にサンマ商材が扱われるようになった.今日では生・生鮮品の販売も普及している.沖縄の食習慣や社会・経済的条件の影響を受けて,本土とは異なるサンマの販売形態や調理・消費動向が確認された.