2016 年 60 巻 1 号 p. 15-18
さまざまな細胞から生成されるエクソソームは,起源細胞の二重膜中にタンパク質および核酸を含む.このため,エクソソームは,新たなバイオマーカーとしてだけでなく,遺伝子輸送の役割を果たし,腫瘍細胞における細胞間相互作用に寄与すると考えられている.本研究では,骨髄腫の多様な合併症形成へのエクソソームの関与を明らかとするため,エクソソーム糖鎖の解析を行った.はじめに,エクソソーム糖鎖解析のための細胞培養条件について検討した.無血清培地またはFBSを含む培地中に分泌されるエクソソームを超遠心法で回収し,内包タンパクを比較した結果,両条件で差が見られなかった.このことより,FBS由来の糖タンパク糖鎖の影響を受けずエクソソーム糖鎖解析を可能とした.この条件を用い,骨髄腫細胞をIL-6で刺激し,細胞表面および,エクソソーム中のシアル酸量についてSSAレクチンを用いて解析した.その結果,刺激時間およびIL-6濃度に応じて,細胞表面上に発現するシアル酸の量は増加した.一方,エクソソーム分画中のシアル酸含量は,刺激2日目に減少したが,4日目には顕著に回復した.以上より,骨髄腫細胞由来のエクソソームは,サイトカイン刺激による起源細胞の糖鎖変化を部分的に反映することを示し,骨髄腫の増悪および全身合併症の発症に関与する可能性を示した.