2017 年 61 巻 2 号 p. 152-154
近年,微生物の新しい同定法として質量分析装置を用いた技術が大きな注目を集めており,世界でも臨床検査をはじめ様々な分野で約2300システム(MALDIバイオタイパー:ブルカー社)が導入されている.本手法は迅速に,かつ遺伝子解析による同定結果とほぼ同等の信頼性が得られるということから,臨床微生物検査における“革新的な技術”と言われている.MALDI-TOF MSが微生物同定システムであるということが広く認知された今,この分野において最も必要とされているのが薬剤耐性検出やタイピングへの応用であるが,現状耐性遺伝子の検出や分子疫学的解析として遺伝子検査が主に利用されている.本稿ではこれらのアプリケーションに質量分析の技術がどう生かされるのか,最新情報と今後の可能性を示す.