1980 年 57 巻 2 号 p. 229-245
部分的に差異をもちながら複数の方言にわたって存在する音韻変化を記述する場合、過剰派生の問題と方言間の相違に配慮してどのように規則を定めるべきかを、中英語の開音節長音化(open syllable lengthening in Middle English)を例にとり検討する。IでLieber (1979)の分析を紹介し、IIでその問題点を探り、Anderson (1974)の分析の可能性を考える。 IIIで史的言語事実に即して方言別に派生を調べ規則を定める。さらに、方言間に見られる開音節長音化と緊密性調整規則の共通性を一般規則で、差異を特定規則で記述することを提案する。IVで一般規則対特定規則の関係が中英語の開音節長音化に限定されるものでなく古英語の代償長音化(compensatory lengthening in Old English)にも当てはまることを示す。