沿岸海洋研究
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Print ISSN : 1342-2758
前線近傍で発生する上昇流と下降流
吉川 裕鬼塚 剛
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2013 年 50 巻 2 号 p. 95-101

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抄録

本稿では密度前線により駆動される鉛直循環について述べる.初めに準地衡方程式を用いて,地衡流に伴う移流と乱流混合が鉛直循環を駆動する仕組みを示す.次に非静水圧模型を用いて行った,前線が駆動する鉛直循環の数値実験の結果を示す.前線に伴う傾圧不安定により,不安定波動が3次元的な流動場を生成するが,鉛直循環に対しては,地衡流移流の効果も乱流混合の効果も重要であることを確認した.低次生態系(NPZD)模型を用いて,このような3次元的な海水輸送に伴う低次生態系の応答を調べた.その結果,栄養塩が枯渇している夏季は鉛直循環に伴う栄養塩の湧昇が,栄養塩が豊富だが混合層が有光層より深い冬季は,鉛直循環が引き起こす混合層の浅化が,それぞれ重要であることが分かった.また,前線域での3次元的な海水輸送に伴い,表層で増殖した植物プランクトンやそれを捕食した動物プランクトンが,有光層以深に輸送される過程が再現された.

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© 2013 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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