日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-020
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アカマツ成木樹幹内における熱収支法測定による蒸散流速の季節変化
*川崎 達郎千葉 幸弘韓 慶民荒木 荒木中野 隆志
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抄録

われわれは大気フラックスモニタリング中のアカマツ林で、生産機構モデル構築を目的に林木個体の炭素固定能力を中心した物質の循環を測定してきた。非同化部の樹幹については高さ毎の樹幹の直径成長を追跡するとともに、二酸化炭素ガスの発生源として、樹幹温度の変化にともなう、季節毎の樹皮呼吸の日変化を測定してきた。
樹幹内部を上方に流れる蒸散流は、樹幹中の細胞の呼吸により発生した二酸化炭素を上方に持ち去り、樹幹表面で観察される樹皮呼吸の値を変動させる可能性がある。また樹幹の直径成長は形成層の肥大成長だけでなく、樹幹木部内の含水量変化の影響を受ける可能性がある。これら変動の検討も目的に、蒸散流速の季節変化を調査した。
調査は山梨県環境科学研究所敷地内、富士山北麓の溶岩原に成立したアカマツ純林で行った。測定対象は胸高直径19.8cmの二股と胸高直径18.7cmの2個体である。先述した直径成長と樹皮呼吸の定期的な測定を行っている。2002年夏より両個体の地上高4 mと12mの樹幹計5箇所で熱収支法による樹幹内蒸散流速の測定を開始した。測定機材は米Dynamax 社製 TDPセンサー(プローブ長3cm)を用い、延べ20ヶ月の連続測定を行った。
TDP測定値は早春に大きく夏から秋にかけて低かった。土壌層が未風化の溶岩原のため極め少なく、むしろ冬季の積雪下で土壌水分が豊富であったためと考えられた。雪からの土壌水分供給は、冬季の温暖な日に観察される若干の光合成、樹皮呼吸、直径成長、春先の成長開始の急速な立ち上がりにも寄与していると考えられた。

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© 2004 日本生態学会
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