日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-100
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翼のかたちが散布を決める!_-_ヤチダモ種子の画像解析と散布実験から分かったこと_-_
*後藤 晋岩田 洋佳芝野 伸策大屋 一美鈴木 憲小川 瞳
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抄録

 北海道の水辺林の主構成種であるヤチダモは,翼のある大型の種子をつける.ヤチダモ種子は,母樹間でその大きさやかたちが大きく異なることから,母樹によって散布パターンが異なる可能性がある.そこで,本研究では,ヤチダモの母樹間で種子の飛翔能力に違いがあるか,また,どのようなかたちの種子がより飛翔するかを解明するため,9母樹から採種したヤチダモ種子の人工散布実験を行なった.散布実験の前に,各種子の重さと面積を測定した.種子のかたちについては,形状解析ソフトウエアSHAPEを用いて,デジタル画像から種子の輪郭を抽出し,楕円フーリエ記述子(EFD)により定量化した.さらに,EFDの主成分分析により,種子の長軸に対して対称な変異と非対称な変異について別々の主成分を求め,主成分スコアをかたちの特徴値とした.人工散布実験では,8.3mのタワーから各母樹10個の種子を1つずつ散布し,各種子の飛翔時間と飛翔距離を測定する実験を5回繰り返した.分散分析の結果,種子の重さ,面積,形の対称成分,飛翔時間は母樹間で有意に異なっていた.そこで,種子の飛翔時間を目的変数として重回帰分析を行った結果,面積,重さ,形の主成分として対称成分のAP3,AP5,非対称成分のBP3が有意な相関が認められた.特に,AP3は種子のかたちの変量としては7%程度と小さいにもかかわらず,飛翔時間と強い相関が認められ,種子の両端が尖るほど飛翔時間がより長くなるという興味深い傾向が検出された.この成分では母樹間の違いが高度に有意であったことから,強い遺伝的支配が示唆される.以上の結果から,森林内において飛翔により有利なかたちの種子をつける母樹が,実際により広範囲に種子散布を行っているかについて,今後明らかにする必要がある.

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© 2004 日本生態学会
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