日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P2-033c
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アカネズミApodemus speciosusの雌におけるテリトリー性とその防衛行動
*坂本 信介
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抄録

雌間テリトリーを持つ小型哺乳類では、そのテリトリー性が、空間分布、個体数変動、分散行動などのメカニズムを理解する上で、極めて重要な要因であると考えられる。小型哺乳類の雌間テリトリーの防衛において、最も重要な役割を果たしているのは、テリトリーオーナーによるマーキング(Viitala & Hoffmeyer 1985)と攻撃行動(Ims 1987; Koskela et al. 1997 )であると考えられている。アカネズミ属Apodemus は、森林性ネズミ類の中では、古くから多くの生態学的研究に用いられてきた。しかし、雌のテリトリー性については、繁殖期における排他的行動圏から推測されてはいるものの、他の証拠は報告されていない。日本固有種のアカネズミにおいても、実験室内でのマーキング行動の検出の試みはあったものの、攻撃行動については調べられていない。また野外で調べられたことはない。
これらの背景を踏まえ、アカネズミの雌がテリトリー性を持ち、テリトリー防衛行動を行なっているかについて調べるために、長期的かつ高頻度のmark and recaptureのデータから繁殖雌の侵入・定着パターンの検出および野外における闘争実験を行なった。
繁殖雌の侵入・定着パターンから、定着に成功した雌の行動圏は、侵入後、早い段階から定住雌の行動圏と明確な境界を持つようになること。一方、定着に失敗した雌の行動圏は、定住雌と行動圏が重なったまま消失することなどが明らかになった。
 野外における闘争実験の結果から、繁殖雌は侵入雌に対し攻撃行動を行い、その頻度がテリトリー内において高く、テリトリー外では低いことなどが明らかになった。
今回の報告では、これらを踏まえて、アカネズミの雌におけるテリトリー性とその防衛における攻撃行動の重要性について論じたい。

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© 2004 日本生態学会
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