日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: L2-5
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潜水性海鳥の分布と体温維持機構
*新妻 靖章
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抄録

ペンギン類やウミスズメ類に代表される潜水性の海鳥類は,主に極域といった冷たい海に限定され分布している。それら海鳥の分布を限定する要因は,餌の有無といった生態的な要因,捕食者を隔てる繁殖地の有無といった物理的要因などがあるだろうが,本公演では,海鳥類の潜水時における生理的要因から考察する。
潜水性の内温動物の生理的な特性,例えば心拍や体温,をモニターするためにはデー・ロガーを用いることで可能である。この研究分野は,近年Data-logging Scienceとして急速に発展した。この技術を用いて,ハシブトウミガラス(Uria lomvia)の潜水行動と体温を同時に記録することに成功した。
ペンギン類やウミスズメ類は南極や北極の海洋生態系の高次捕食者であり,その潜水性能は高い体温を維持することによって達成されると考えられている。高い体温下では,筋収縮に関する酵素の活性を上げることができ,すばやい酵素反応は大きな力を生むことができる。しかし,水は空気に比べて25倍早く熱を奪うため,海鳥のような小さな動物が極域といった寒冷な海に潜り,体温を維持することができるのだろうか?それに加え,高い体温は肺,血液,筋肉などに蓄えた酸素を早く消費してしまう。どのようにして,潜水時間を長くすることができるのだろうか?などなど,疑問は多い。はじめにウミガラスの潜水時における体温維持機構について考察する。小さな海鳥類の体温維持機構について明らかにしたうえで,生理学の面から見た場合,このような海鳥類が暖かい海に進出することができるのかについて,極単純化した熱収支モデルから予想する。

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© 2004 日本生態学会
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