日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P3-130c
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都道府県別レッドリスト情報から見た日本産食虫目およびネズミ科動物の保護の現状
*横畑 泰志
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抄録
 食虫目、齧歯目などの小型哺乳類は、大型種と較べて保護・保全の現場で関心が持たれることが少ないが、実際には種や地域個体群のレベルで絶滅のおそれが増大しているものが多く、積極的な対応が迫られている。そこで、食虫目およびネズミ科動物の保護に関する現状を具体的に把握する目的で、主に都道府県別のレッドリストに基づき、地域ごとの情報を収集、整理した。
 2004年6月現在、47都道府県中42で哺乳類を含む野生生物のレッドリストが公開されており、東京都では区部、北部、南部、西部、伊豆諸島の5区域に分けてリストが作られている。食虫目は国内に外来種であるハリネズミの1種(恐らくマンシュウハリネズミ)および最近染色体の数カ所の差異によりサドモグラからの独立性が認識されるようになったエチゴモグラを含む21種が生息しており、様々な資料からそれらの生息情報が得られたのべ268種・都道府県(東京都は5として算出、以下同じ)で情報不足、未決定を除くと83件(31.0_%_、ほぼ「3種に1種」)の指定があった。齧歯目ネズミ科は国内に外来種のマスクラットおよび住家性の4種を含めて20種が生息しており、それらの生息情報が得られたのべ219種・都道府県(住家性の種を除く)で情報不足、現状不明、未決定を除くと53件(24.2_%_、ほぼ「4種に1種」)の指定があった。このように、食虫目やネズミ科のレッドリストの指定率は他の生物と比較して低くはない。指定上の問題点として、保護上重要な種が未決定となっている(沖縄県のセンカクモグラ、セスジネズミ)、重要と考えられる種が指定されていない(静岡県のアズミトガリネズミ)、現在あまり支持されない分類群が用いられている場合が多い(シロウマトガリネズミ、コモグラ、カゲネズミなど)、外来種が上位にランクされている(長崎県のジャコウネズミがCR)といった点が挙げられる。 
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© 2004 日本生態学会
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