日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: L3-1
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国際共同研究による千島列島フロラの特性研究
*高橋 英樹
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キーワード: biogeography, flora, Kurils, #, #
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抄録

1994年から2000年にかけて、米・露・日の生物分類学者が毎年30名以上参加して、国際千島列島調査International Kuril Island Projectが行われた。このうち4回の調査に参加することができ、千島列島における維管束植物フロラの概要を把握することができた(高橋 1996, 2002)。この国際調査の概要について紹介する。昆虫、貝類、植物の生物地理学的なまとめはPietsch et al. (2003)でおこなわれ、これまで生物分布境界線として択捉島とウルップ島の間に引かれていた「宮部線」よりも、ウルップ島とシムシル島の間のブッソル海峡(以下、「ブッソル線」と仮称する)に北方系と南方系とを分かつ重要な生物地理学的境界がある事が明らかにされた。「宮部線」は植生学的な境界線であり、「ブッソル線」は分類地理学的な境界線と解釈されているが、両者の違いと意義について解説する。
千島列島とその周辺での種内レベルの地理的分化の例として、エゾコザクラ(Fujii et al. 1999)とシオガマギク(Fujii 2003)の葉緑体DNA研究を取上げる。エゾコザクラにおいては氷河期を通して、数回の南北移動があったことを示唆する。またシオガマギクでは千島とサハリンとの二つのルートを移動した個体群間には遺伝的な分化があることが示されている。さらにエゾコザクラの花の多型性の頻度分布は、大陸に近い島と、列島中部で孤立した島とで差異が認められ、生態学的な意味があると推測される。
 戦前に採集されたサハリン・千島の標本をも有効に利・活用しながら採集標本のDB化作業をおこなっている。サハリン_-_千島列島間での現存個体数を比較するための間接的で簡便な指標としてS-K indexを考案した。裸子植物、ツツジ科、シダ類等の植物群の植物地理学的な考察をこのS-K indexを使って試みる。

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© 2004 日本生態学会
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