日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-W06
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盗蜜型ポリネーターがエゾエンゴサクの繁殖成功に及ぼす影響
*笠木 哲也工藤 岳
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抄録

 オオマルハナバチはエゾエンゴサクの花弁後端にのびる距に穴を開けて盗蜜するが、花序上を動きまわる時に花内部の繁殖器官に接触して受粉に貢献することがある。このようにオオマルハナバチはエゾエンゴサクにとって盗蜜型ポリネーターとして機能するが、個体群レベルでの繁殖成功に対する効果は明らかではない。オオマルハナバチが多い低地林個体群と正当訪花型のマルハナバチが多い山地林個体群で、盗蜜行動を制限するために距の部分をストローで覆う処理(以下、ストロー処理と略す)を行い、エゾエンゴサクの結実と花粉持ち去りへの影響を調べた。

 エゾエンゴサクへのマルハナバチの全訪問のうちオオマルハナバチの訪問が占める割合は、低地林では8割以上、山地林では4割以下であった。どちらの個体群でもポリネーターのタイプによらず花序訪問頻度と花序内訪花数はストロー処理と未処理間で差がなかった。正当型のマルハナバチは1花あたりの滞在時間に処理間差がなかったが、オオマルハナバチはストロー処理によって滞在時間が短くなった。これらから、ストロー処理によってオオマルハナバチの訪問及び花序内での移動を妨げずに盗蜜行動だけを制限することができたと考えられた。

 山地林ではストロー処理と未処理間で結実率に違いはなかったが、低地林ではストロー処理によって結実率が低下した。花粉は両個体群とも開花期間中に徐々に持ち去られた。山地林では1花あたりの花粉残存量は開花期間を通して処理間差がなかった。一方、低地林ではストロー処理をした花の花粉が開花後期になっても多く残る傾向があった。これらの結果は、低地林個体群はオオマルハナバチに繁殖成功を依存しているが、山地林個体群ではそうではないことを示している。以上から、オオマルハナバチが優占するエゾエンゴサク個体群では、植物と盗蜜型ポリネーターの間に相利共生関係が生じていることが明らかになった。

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© 2004 日本生態学会
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