日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-Y29
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二年草オオハマボッス個体群における空間分布の年変動
*鈴木 亮鈴木 準一郎可知 直毅
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抄録

植物個体群の空間動態を理解するには、世代内の死亡の空間パターンだけでなく、世代更新の空間パターンも明らかにする必要がある。小笠原諸島の海岸沿いの岩場に生育する一回繁殖型二年草オオハマボッス,Lysimachia rubida (Primulaceae)を対象に、5世代にわたる空間分布の変化を追跡した。
オオハマボッスは小笠原諸島の海岸に面した大小さまざまな礫がモザイク状におおう裸地環境に生育する。礫環境の効果を個体の空間分布を決める主要因として仮定し、それ以外の生態学的要因の効果を検出するために礫環境と個体密度の関係を考慮した無作為化検定法を開発した。
礫環境と個体の空間配置をランダムにずらした無作為化検定の結果、観察された個体の空間分布は礫サイズの小さな環境により偏って分布している傾向が統計的に検出された。つぎに、礫環境と個体密度の関係を保ったまま個体をランダムに配置する無作為化検定を行った。その結果、礫環境と個体密度の関係によって予想される以上に、観察された個体の空間分布は集中していること、実生個体は前年の繁殖個体の周囲に集中していることが統計的に示された。このことは、種子散布が繁殖個体の周囲に制限されている可能性を示唆する。また、礫環境と個体密度の関係によって予想される以上に、世代の異なる繁殖個体は互いに近接して分布していることも統計的に示された。この結果は、個体が利用する生育パッチは世代間で重複していることを示唆する。さらに、個体の空間分布に一回繁殖型二年草の生活史と同調した周期性があるかを検定したが、周期性は検出されなかった。その原因として、繁殖期を一年遅らす、埋土種子となるなど生活史形質の個体間変異が存在したことが考えられた。本研究の結果から、生育地がパッチ状に分布する環境での空間動態を決める世代内世代間プロセスが示された。

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© 2004 日本生態学会
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