日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: D103
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金沢市の用水路におけるホタルの発生消長と産卵場所
*名村 謙吾鎌田 直人
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抄録

ホタルは日本人になじみの深かった昆虫だが、近年はその姿があまり見られなくなってきている。この原因として、化学農薬の使用、水田の減少のほかにも、河川や用水路のコンクリート化(河川の護岸工、3面工用水路の増加)が関係しているのではないかと推測されている。そこで本研究では、ゲンジボタルとヘイケボタルが生息できるランドスケープレベルでの環境の保全と創出の指針を示すことを目標に、金沢市内の5つの用水路とその周辺でホタルの生息調査と環境調査を行った。
その結果、用水路ごとにホタル成虫の発生消長に差が認められ、発生が最も早い用水と、最も遅い用水では、両種とも約3週間の開きがみられた。用水路ごとの発生順序は、両種ともに同様の傾向が認められたため、幼虫発育期の水温が関係している可能性が考えられた。各用水の水温をデータロガーで60分間隔で記録し解析した結果、発生が最も早い用水の水温は他の用水の水温より高く、発生の最も遅い用水の水温は他の用水の水温より低いという傾向が見られ、最も発生の早い用水の水温と最も発生の遅い用水の水温の温度差は平均で約2℃であった。各用水において両種の幼虫をサンプリングし、体サイズを調べた。水温と幼虫の体サイズの関係を解析した結果、水温の高い用水でサンプリングされた幼虫は水温の低い用水からサンプリングされた幼虫よりも体サイズが大きい傾向が認められた。これらのことから、各用水路におけるホタル成虫の発生消長の違いは、水温による発育速度の違いを反映した結果であると考えられた。

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© 2005 日本生態学会
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