日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: D105
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ニッポンバラタナゴのマイクロサテライトマーカーの開発
*白井 康子張 志保子津郷 雅之隅田 真由池田 滋田島 茂行
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抄録

ニッポンバラタナゴ(Rhodeus ocellatus kurumeus)は、コイ科タナゴ亜科に属する淡水魚で、成熟したオスは繁殖期に美しい婚姻色を示す。かつて西日本の淡水域に広く分布していた日本固有種であるが、生息環境の劣化、外来種による補食等のほか、タイリクバラタナゴ(R. o. ocellatus)との交雑により、生息数が減少している。環境省のレッドデータブックで絶滅危惧IA類(CR)に指定されており、香川県東讃地区や、大阪府および北九州の一部でのみ生息が確認されている。香川県はニッポンバラタナゴの希少な生息地であるが,県西部の財田川に放流されたアユの稚魚にタイリクバラタナゴが混じって移入されたといわれており、現在では、県中央部の香東川までタイリクバラタナゴが侵入している。ニッポンバラタナゴの保護対策が円滑に実施されるためには、ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴの正確な判別が不可欠である。しかし、両亜種は形態学的に差異が少なく、外見では判別が困難なため、これまではアイソザイム分析やPCR-RFLP分析によって判別が行われてきた。そこで、マイクロサテライトを用いた迅速で正確な亜種識別法の確立をめざし研究を始めた。今回開発したマイクロサテライトマーカーRKU236およびRKU238を用いて、香川県内10ヶ所のため池より採集されたニッポンバラタナゴ112個体を比較したところ、PCR増幅産物はすべて同じ電気泳動バンドパターンを示し、変異は認められなかった。それらのバンドパターンは香川県及び岡山県産のタイリクバラタナゴとは異なっていたことから、いずれのマイクロサテライトマーカーも亜種識別が容易なマーカーであると考えられた。

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© 2005 日本生態学会
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