日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S2-1
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有性生殖と種形成の生態学:これまでとこれから
*矢原 徹一
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抄録

有性生殖の利点として、これまでは、「赤の女王仮説」などの短期的効果に注目が集まってきた。しかし、有性型が短期的に無性型を完全に駆逐できない条件は多数ある(有性型と無性型のニッチ分化・倍数性のコスト、など)。このような条件の下では、環境が変化したときに、有性型のほうが適応進化・種形成の速度が速いという長期的な効果が、有性型を有利にする可能性がある。メキシコ産ステビア属における有性生殖・無性生殖型の分布と、有性生殖系統の放散的な分化の証拠(中澤・副島・河原・渡邊との共同研究)は、この考えを支持する。有性生殖の短期的な利点との関連では、無性型がまれに有性型と交雑するという現象にもっと注目すべきではないか。このような「稀な有性生殖」があれば、無性型も有性生殖の短期的な利点をある程度享受し、さらに無性生殖の利点や、雑種性の利点を享受できる。このような有性型と無性型の交雑は、新たな「種」を生み出すプロセスでもある。

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© 2005 日本生態学会
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