日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: E105
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絶滅のおそれのある水生昆虫をオオクチバスから守るためのため池の管理
*西原 昇吾鷲谷 いづみ
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抄録

世界的にみても特に侵略性の高い外来魚オオクチバスは,今では意図的導入により国内各地の池沼,湖に生息する.伝統的な維持・管理が行われてきたため池は水生生物の生息場所として重要であるが,農業の近代化に伴う管理放棄に加え,オオクチバスの侵入が大きな脅威となっている.これまで,各地でオオクチバス駆除が行われてきたが,生物多様性の高い地域への侵入直後の影響を評価した研究は少ない.
本研究では,現在でも国内で最も良好な水生昆虫相が残存する奥能登平野部の約200ヶ所のため池でオオクチバスの分布と水生生物群集の調査を行った.オオクチバスは,ダム湖2ヶ所と,道路,集落に近く水を抜かなくなった4ヶ所の池で確認された.オオクチバスが侵入したすべての池で2003_から_04年に地元の有志,研究者,行政が協力して,水抜き,寄せ網,刺し網,釣り,流出防止網による駆除を実施した.各池での捕獲数は23匹_から_167匹であり,完全に水の抜ける池ではほぼ完全に駆除できた.その際にフナやコイなどの他の魚類の幼魚は見られなかった.2004年にはオオクチバス223匹の胃内容から,絶滅危惧種を含む各種の水生昆虫,モクズガニ,ヨシノボリ,オオクチバス,イモリ,アマガエル,ネズミ類などが確認されたが,前年に確認されたヌマエビは確認されなかった.駆除直前の各池の水生生物相との対比では,コサナエ,センブリなどの体長2cm程の底生の水生昆虫の捕食が際立った.侵入後1年の1つの池では大型のヤゴ類,ゲンゴロウ類幼虫が減少し,侵入後3_から_4年の3つの池では大型ゲンゴロウ類はほとんど確認できないなど,水生昆虫相の変化が著しかった.
以上より,オオクチバスがため池の水生昆虫相に大きな影響を与えていること,駆除には伝統的なため池の水管理が有効であることが示された.水生生物を保全するためには,地元主体の協働によるため池の維持・管理の復活が急務である.

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© 2005 日本生態学会
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