2090年代の気候変化シナリオ条件下におけるブナ林の分布可能域を樹形モデル(Tree-Based Models: TMs)を用いて予測し、ブナ林の温暖化に対する脆弱性と感受性を評価した。TMs構築にあたり、5つの土地的変量(大地形、表層地質、土壌型、斜面方位と傾斜)を、国土数値情報から抽出、加工して4気候変量(夏期降水量(PRS), 冬期降水量(PRW), 最寒月最低気温(TMC), 暖かさの指数(WI))に加え、9変量を説明変量とした。作成したTMsに将来の気候値を当てはめた結果、分布確率0.5以上の地域は2090年代には91%減少することが予測された。九州、四国、本州太平洋側、北海道南西部のブナ林の多くは2090年代にはWIの増加により非常に脆弱な状態になることが示唆された。北海道南部、本州北部日本海側のブナ林は、分布確率の減少幅が大きいことが予測され、温暖化に対する負の感受性が高かった。北海道のブナ林分布可能域は北へ拡大するが、高温・乾燥の石狩低地帯がブナ林の北上を妨げる要因になると考えられた。