日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S3-2
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里山研究と原発計画
*野間 直彦安渓 貴子
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抄録

 日本生態学会と日本生態学会中国四国地区会は、独自の調査と分析に基づき、上関原子力発電所建設予定地の貴重な自然環境と生物多様性にみあった環境影響評価を実施することを関係諸機関に要望してきた。その5年間の経過と現状からは、環境影響評価手続きの中で学会の指摘はほとんど生かされなかったと言わざるを得ない。生態学では原発計画は止まらなかったし変わらなかった。
 しかし、共有地の入会権をめぐって裁判が行われており、一審では入会権が認められ工事が事実上できない結果になった。二審では、過去に薪をとるための伐採があったかどうかが争われている(伐採されたことがない林であれば入会利用の事実がなく、権利が縮小される可能性がある)。別の面で学会の調査が生きる可能性が出てきた。
 我々が予定地の2か所の共有地内の林で行った調査では、最大の幹の直径が25cm以下と細く、落葉樹が胸高断面積比で65%前後と多かった。神社に見られる極相に近い林とは大きく異なり、かなり若い林と考えられる。薪炭材として重要であったコナラとアベマキが優占種の最上位を占め、ほかに落葉樹では、ハゼノキ、ハマクサギ、ヤマザクラ、シデザクラがみられた。常緑樹ではクロキ、ヒメユズリハ、カゴノキ、カクレミノ、ヤブニッケイ、シロダモ等が多く出現した。萌芽が多いという株の形態と、成長錐による樹齢の推定から、一方は40-50年前、もう一方は30-40年前までは継続的に伐採されていた林と考えられる。空中写真を解析した結果もこれを支持する。山口、広島、岡山各県でのかつての薪炭林の構造とも似通っている。
 伐採されていた二次林として一般的な姿であるが、里山の生態学の目で見ることが過去の利用を証明し、原発計画に重要(で皮肉)な役割を果たす可能性が高い。

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© 2005 日本生態学会
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