日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: H104
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宿主ー寄生者系モデルの進化及び個体群動態
*満江 綾子高須 夫悟重定 南奈子
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抄録

生物の種間相互作用の一つに捕食・寄生関係がある。宿主の体表や体内に卵を産み付け、孵化した幼虫は宿主を食べて栄養分とする寄生者のことを捕食寄生者という。本研究は、捕食・寄生関係の数理モデルであるNicholson-Baileyモデルを拡張し、複数寄生者と宿主の個体群動態を解析する。寄生系の古典ダイナミクスとしてNicholson-Baileyモデルを取り上げる。このモデルは、幼虫などを宿主として見付け産卵する寄生者の生活史を表す離散時間モデルである。しかし、このモデルは常に振動しながら発散する性質を持ち、また、寄生がない状態ではホスト集団が指数的に発散するという欠点がある。そこで本研究では、以下の条件を組み込む事によって、捕食者-被食者の個体数変動の安定性がどのような影響を受けるかを考察する。捕食者-被食者の動態を考える上で、被食者の個体数が増加したときに捕食者がどのような反応を示すかといったfunctional responseとして、捕食者が被食者1匹を捕獲した後、その処理をするために費やす時間handling-timeを組み込み、パラメータの進化が個体群の安定性に与える影響について解析する。古典的なモデルでは寄生者集団の探索効率は全て同じであると考えている。しかし、実際の系では個体間の性質の違いなどの集団内変異が存在すると思われる。本研究では、同一宿主に対し複数寄生者が存在する場合について、探索効率やhandling-timeなど個体群動態のパラメータの進化が個体群動態の安定性・共存条件に及ぼす影響を解析する。

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© 2005 日本生態学会
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