日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: H108
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周期的および非周期的環境変動が侵入生物の分布拡大に与える影響
*杵崎 のり子川崎 廣吉高須 夫悟重定 南奈子
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抄録

 近年の人為的環境撹乱により生物の生息域が分断化され生物にとって好ましくない環境が増えるなど,生物の存続に大きな影響が出ている.そのため本研究では環境の不均質が侵入生物の分布拡大に与える影響について数理モデルを用いて調べ,保全生物学的観点から考察をおこなっていく. 今回,不均質な環境の中でも特に周期的に変化している環境(周期的環境とよぶ)とランダムに変化している環境(非周期的環境とよぶ)において1次元の一般Fisherモデルを用いて数値計算することにより,環境変動が侵入生物の伝播速度や分布拡大パターンに及ぼす影響を調べた. 周期的環境としては,内的自然増加率や拡散係数がsin関数的に変化する環境およびパッチ状環境(侵入生物にとって好適な環境と不適な環境が交互に周期的にあらわれる環境)を考え,振幅や空間周期を変化させることによって伝播速度に与える影響を調べた.その結果,内的自然増加率の振幅を増加させることによって伝播速度は速くなるが,拡散係数に関しては振幅を増加させることによって伝播速度が減少することや,内的自然増加率や拡散係数の空間周期を増加させることによって伝播速度が増加することなどが分かった.また,sin状環境においてもパッチ状環境についても同様の結果が得られた. 非周期的環境としては,sin状環境の場合,その振幅や空間周期をランダムに変化させて,ランダム度合いが伝播速度に及ぼす影響を数値計算によって調べた.その結果,内的自然増加率に関してはランダム度を大きくすることによって伝播速度が速くなるのに対して,拡散係数についてはランダム度を変化させても伝播速度にはほとんど影響がないこと,また,内的自然増加率と拡散係数との変化の位相が逆になっている時伝播速度が速くなることなどが分かった.

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© 2005 日本生態学会
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