日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: H110
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土壌の栄養を考慮したロッタリーモデルの解析
*岩田 繁英今  隆助竹内 康博
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抄録

熱帯雨林で多様な種が共存しているのは一般によく知られている.しかし共存の要因は明確でない.本研究では多種の共存の要因として空き地と栄養に注目し,それらの影響を調べる.一般に,攪乱による植物の除去は個体数の減少のみならず,幼生の定着場所(空き地)の提供という側面も有す.そして,植物の幼生個体の生産率は土壌中の栄養に依存している.空き地と栄養の存在は植物の繁殖にとって必要不可欠な要素と言える.そこで,本研究では空き地と栄養が種共存に与える定性的影響を調べるために数理モデルを用いる.我々はChesson and Warner(1981)により提案されたロッタリーモデルを基本とした新たなモデルを提案する.基本ロッタリーモデルでは,繁殖率と死亡率を変動させた場合に多種共存が促され,変動させない場合では死亡率と繁殖率の割合が同じという意味で生理的特徴がよく似た生物のみが共存できるという結果が知られている.この繁殖率と死亡率を変動させない場合での結果は,多種共存はほとんど起こりえないことを意味している.更に,基本ロッタリーモデルでは栄養は十分存在すると仮定しているため,植物は常に幼生を生産でき,攪乱によって生成された空き地は必ずいずれかの種の幼生によって占有されると仮定されている. そこで,我々はChesson and Warner(1981)の提案したロッタリーモデルを改良し,栄養,を考慮したロッタリーモデルを提案する.今回,提案するモデルの解析から空き地と栄養を考慮することによる共存可能性について発表する.

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© 2005 日本生態学会
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