日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: B206
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石垣島および沖縄島におけるミドリイシ群体の分布パターン
*佐藤 崇範
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抄録

 近年,各地のサンゴ生息域において大規模白化やオニヒトデ・サンゴ食貝の大発生などの影響により,特にミドリイシ類の群体数・被度が低下している.このようなサンゴ群集の回復には,幼生の新規加入とその成長が重要な鍵になると考えられることから,石垣島と沖縄島において,ミドリイシ属の群体サイズと出現頻度を比較し,両島でのサンゴ群集の現状を考察する.またそのような状況を引き起こしている要因についても検討する.
 現地調査は,2002年9月に石垣島の7海域と沖縄島の5海域で行った.各調査海域の外洋側(礁斜面上部)水深4_から_5m付近に等間隔で12個の方形枠(1m×1m)を設置し,枠内を撮影して得られた画像から底質の評価と出現サンゴ種の記載を行った.ミドリイシ属の群体に関しては,長径5cm以上の群体については画像から投影面積とその長径・短径を計測し,長径5cm以下の群体(稚サンゴ)については,同調査地点に別に配置した8個の方形枠(0.5m×0.5m)内で直接目視観察して,長径も計測した.
 調査時におけるサンゴ被度は,石垣島では14_から_57%であり,沖縄島では0.6_から_6.7%であった.石垣島では海域ごとに優占種が異なるもののミドリイシ属の割合は全体的に高く,長径10_から_15cm程の数年前に加入したと思われる群体も多くみられが,沖縄島ではキクメイシ科やハマサンゴ属が主要な出現種となり,ミドリイシ属はほとんどみられなかった.しかし,ミドリイシ属の稚サンゴ数は,石垣島では9.5_から_103.5群体/m2,沖縄島では4.0_から_20.0群体/m2と極端な差はみられず,幼生の供給量よりも新規加入群体の長期的な生存率が大きく異なっている状況が明らかとなった.

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© 2005 日本生態学会
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