日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S4-1
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直線化された川の再蛇行化_-_分野間の共同について_-_
*河口 洋一中村 太士
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抄録

 2002年春,北海道東部を流れる標津川下流域では,国内で初めてとなる川の再蛇行化実験が実施された。今回の再蛇行化実験は,直線河道と過去に直線化によって河道周辺に残された一つの旧川(旧河道)を再び連結する方法で行われた。川の再蛇行化と氾濫原の復元によって、失いつつある自然環境を取り戻そうという標津川の試みは、国内では例をみない大規模な事業であるが、世界ではすでに幾つかの取り組みが実施されている。例えば、米国フロリダ州の中央部を流れるキシミー(Kissimmee)川では、水門の撤去、および約10kmの直線河道を埋め戻すことによって蛇行河川と氾濫原の復元が始まり、また、欧州デンマークを流れるスキャーン(Skjern)川でも、川の再蛇行化によって約2200haに及ぶ氾濫原の復元が行われている。しかし、先駆的な事例はあるものの、川の再蛇行化によって河川環境や生物群集がどのように応答したかを報告している研究例は未だ少ない。そのため、川の再蛇行化に伴う生態系の変化を、物理的、化学的、生物的側面から明らかにする必要性は高く、今後の川の再生事業を実施するための基礎データを提供できると考える。 今回は、川の再蛇行化実験で行った複数の調査結果(河道地形、水環境、食物網構造、水生生物群集など)について説明し、これまでに明らかになった内容を報告する。また、この大規模な検証実験には、生態学だけでなく河川工学や河道地形、水質など、異なる分野の研究者が加わっており、分野を横断する新たな研究テーマの発掘や集水域生態系科学における分野間の共同研究の重要性について発表したい。

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© 2005 日本生態学会
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