日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: C206
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アオキミタマバエの卵期における密度依存的死亡
*今井 健介
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抄録

多くの生物は餌に関連した資源競争にさらされている。種内での競争はその個体群動態だけでなく、時間・空間の利用様式やそのほかの行動的形質の進化にも影響を及ぼすと考えられる。しかしながら、植食性昆虫においてはそのような種内資源競争の実証はきわめて限られている。アオキミタマバエは常緑灌木であるアオキの幼果に卵を産み付け、孵化幼虫がこれをゴール化する。本種の成虫寿命は一日程度であるが、羽化が持続的に起こるため、飛翔シーズンは10から15日にわたる。その間、複数の成虫が訪果し、1成虫は1訪果あたり1から3個程度の卵を産下する。最終的に、1つの幼果に産下される卵は数個から数十個に達する。本発表では、タマバエの卵期において未知の要因による死亡が起こること、その死亡が強い密度依存性を持つことを明らかにする。これは本種の卵期において寄主資源に関する種内競争が生じていることを示す。さらに、幼果に産下される卵の数は幼果のサイズに比例し、かつこの比例関係が保たれる限りにおいては卵期死亡率が変化しないことを示す。これは幼果サイズと既産下卵の数に応じて、タマバエが産卵数を調節し、理想自由分布を実現しようとしているためであると考えられる。最後にデータに基づいて、卵期の死亡が本種の密度制御に果たす役割と、種内競争の具体的なメカニズムについて考察を試みる。

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© 2005 日本生態学会
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