日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: D202
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ベレンティ保護区におけるワオキツネザルの脱毛症とその個体群への影響
*市野 進一郎相馬 貴代
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抄録

地域的に孤立している個体群は、病気の発生によって絶滅する危険性が高い。繁殖率の低い哺乳類の個体群では、特に危険性が高いので、病気の原因と個体群に与える影響を明らかにする必要がある。本発表では、マダガスカル南部のベレンティ(Berenty)保護区に生息する昼行性原猿のワオキツネザル(Lemur catta)個体群に発生した脱毛症について報告する。
ベレンティ保護区は、面積約250haの小規模な保護区で、周囲の森林とはサイザル麻のプランテーションによって分断されている。ここでは、2000年以降に脱毛したワオキツネザルが見られるようになった。脱毛症の原因や個体群動態への影響は明らかになっていない。疥癬ダニによる伝染病が疑われ、寄生虫の調査がおこなわれたが、今のところ脱毛を引き起こす寄生虫は発見されていない。
保護区内に設定された主調査地域(14.2ha)には、7群約100頭のワオキツネザルが生息しており、1989年以降、個体識別にもとづく長期継続調査がおこなわれている。そのため、1989年以降に生まれた個体の年齢や血縁関係が明らかになっている。そこで、2001年、2003年、2004年の3回にわたり、主調査地域に生息するワオキツネザルの脱毛症の状態を調査した。個体ごとの体毛の状態を6段階に分類し、特に状態が悪い場合を脱毛症と定義した。そして、脱毛症の個体の年齢、群れと血縁集団、死亡率、出産率、出産したアカンボウの生存率を、脱毛症ではない個体と比較した。また、2001年以降の症状の変化についても述べる。

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© 2005 日本生態学会
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