日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S5-3
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高原草原生態系におけるCO2収支 -現状と将来予測-
*加藤 知道
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抄録

青海_-_チベット高原の北東部に位置する、中国青海省海北地区の高山草原生態系(カヤツリグサ科C3草本が優占)を対象とし、渦相関法を用いた大気-生態系間のCO2交換の測定(2001年8月_から_2002年12月)と、生態系炭素循環モデルSim-CYCLEを用いた推定(1981-2000年)によって、異なる時間スケールでのCO2交換と環境要因の関係を明らかにし、温暖化に伴うCO2交換の変化を予測した。
 植物生長期(5-9月)の日中のCO2吸収量は、LAI(葉面積指数)の季節変化と、光(PPFD)の日々の変化量に依存していた。一方、夜間のCO2放出量、すなわち生態系呼吸量Reは、土壌温度に対しては正の相関を示し、土壌水分に対しては負の関係を示した。実測値から年間CO2吸収量は78.5 gC m-2となり、他の高山帯とほぼ同等の小さな値であった。世界の様々な生態系における、年平均気温とCO2吸収量の関係から見て、本生態系の制限要因は温度であることが示唆された。
 Sim-CYCLEを用いたCO2交換の変動実験の結果では、総一次生産GPPと生態系純生産NEPの年々推移は同調しており、変化幅は±70 g C m-2yr-1程度であった。一方、Reは変動幅が小さかった。NEPは、温度の上昇に対して、緩やかな負の関係を示したが、有意ではなかった。気候変化に対する応答ポテンシャルを調べるモデル感度実験では、年平均気温を5℃上昇させたとき、GPPは応答が速く、20年程度で定常に達したが、Reはそれよりも反応が緩やかであった。これによると、ある程度の温暖化は植物生産力を増加させる可能性があることを示唆した。次に、年平均温度を±10℃の間で強制的に変化させたモデル実験では、5℃までの年平均気温の上昇はGPPを増加させるが、それ以上の上昇は逆に現在よりも値を低下させた。ある程度の温暖化は、本生態系をCO2の吸収源として維持させるが、温暖化が顕著になると、放出源になる可能性が考えられた。

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© 2005 日本生態学会
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