日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: E210
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里山林における植生変化とその要因
*洲崎 燈子
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抄録

 かつて薪炭林として利用されてきたコナラ二次林は日本の本州以南に広く分布するが、その林相や成立過程の地域的な特性についてはまだ分かっていないことが多い。愛知県名古屋市の約10km東に位置する豊田市では、三河高原と西三河平野の境界の丘陵上にまとまった面積のコナラ二次林が帯状に残存している。本研究は、このコナラ二次林の成立過程と現況を把握することを目的に行った。 1947年、1974年、2002年に出版された1/25,000地形図と、それぞれの地図の出版年前後に撮影された空中写真から、植生と土地利用の判別を行った。約290km2の全市域を、3次メッシュを4分割した約500×500 mS2のメッシュに分割し、各メッシュ内で最も広い面積を占めていた植生もしくは土地利用を判別した。 森林メッシュの割合は1947年には約49%だったが、2002年には約43%と1割以上減少していた。1947年には森林の8割がアカマツ林だったが、2002年にはコナラ林がその比率を占めるようになっていた。1974年に確認されたコナラ林の7割以上が、1947年にはアカマツ林であり、2002年のコナラ林メッシュの5割近くが1974年にはアカマツ林だった。クロマツ林のうち7割も、1974年から2002年にかけてコナラ林に置き換わった。現在見られるコナラ林のうち、1947年の時点で成林していた林分は5%に満たなかった。マツ林のコナラ林への変化の主な要因は、1947-1974年では薪炭林の管理放棄、1974-2002年ではマツ枯れであると推測された。コナラ林の立地や成立過程と植生の間には、明瞭な関係は認められなかった。

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© 2005 日本生態学会
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