日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S5-4
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青海・チベット高原湿地の温暖化ガス動態-家畜による被食の効果について-
*廣田 充
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抄録

青海・チベット草原生態系には、広大な草原とともに多くの湿地が点在している。これらの高原湿地では、土壌有機炭素の蓄積量が非常に多く、炭素収支において吸収源と考えられている。同時に、還元土壌が卓越する高原湿地では、CO2だけではなく、CH4の放出も見られることから、温暖化ガスの放出源である可能性が高く、高原湿地_-_大気間のCO2とCH4ガス動態を定量化することは重要である。そこで発表者らは、2002年より継続的に高原湿地においてCO2とCH4ガス動態の調査を行っており、その結果の一部については、これまで当大会において発表している。
一方、青海・チベット草原では、牧畜業が盛んで羊を中心とした家畜が多く飼われている。これらの家畜は、水のみ場として湿地を利用しており、湿地植生は、集中的に被食を受けている。湿地_-_大気間のガス動態は、主に湿地の植生を介して行われることから、家畜の被食によって高原湿地におけるCO2とCH4ガス動態の変化する事が予測されるが、これら家畜の被食の影響について明らかにされていない。高原湿地の温暖化ガス動態を解明するには、このような家畜の被食の影響を明らかにする必要がある。そこで本発表では、高原湿地のCO2とCH4ガス動態、特に家畜の被食が与える影響について報告する。
対象湿地内に、家畜の入らない保護区(40 x 100m)を設置し、保護区と保護区に隣接する対照区の2区間で、チャンバー法によるCO2とCH4フラックス、植物バイオマス及び土壌環境を調査した。その結果、対照区では植物バイオマスおよびCO2吸収量が減少し、CH4放出量が増加することが明らかになった。これらから、家畜の被食によって高原湿地の地球温暖化への貢献度が大きくなることが示唆された。

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© 2005 日本生態学会
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