高CO2によって一般に光合成速度が促進されるが、その促進は必ずしも繁殖収量(生育終了時の繁殖器官重)の促進に結びつかない。これは繁殖収量が、光合成産物の獲得だけでなく、その繁殖分配や呼吸消費の変化にも影響されるためだと考えられる。そこで高CO2にともなう繁殖収量の変化を、光合成産物の獲得、繁殖分配、呼吸消費の高CO2応答の結果として解析した。
一年生草本オオオナモミ(Xanthium canadense)を大気CO2濃度(約360ppm)と高CO2濃度(約700ppm)下で生育させ、生育期間中に定期的に刈り取りを行った。刈り取りと同時に各器官の呼吸速度の測定を行い、乾重成長量と呼吸消費量を合算して光合成量を算出した。
高CO2による個体光合成量の増加は、栄養成長期間中にみられたが繁殖成長期間中にはみられなかった。光合成産物の繁殖分配割合にも高CO2の影響はなかったが、繁殖収量は増加した。これは繁殖器官における光合成産物の呼吸消費割合が、高CO2によって低下したためであった。この呼吸消費割合の低下は維持呼吸量の低下によるものであり、それは高CO2生育個体の繁殖器官の初期成長が低いことと季節にともなう気温低下に起因すると考えられた。これらの結果は、繁殖収量の高CO2応答において、呼吸消費と気温の変化が重要な役割を持つことを示している。