日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: F208
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コナラ林分における光合成生産のモデル解析
*右田 千春千葉 幸弘韓 慶民毛塚 由佳理丹下 健
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抄録

気候変動に伴う陸上生態系の物質生産の変化予測には、光合成など生理機能の環境応答特性の把握が不可欠である。本研究では、コナラ林冠における光合成生産の環境応答の季節変動を明らかにすることを目的として、林冠内の異なる環境条件に配置された個葉の光合成特性の時空間的変動および光合成生産の解析を行った。調査林分は茨城県つくば市にある森林総合研究所構内の27年生コナラ林である。まず、観測用タワー内にある全供試木5個体の樹冠を一辺50cmの立方体に区切って、全葉数をカウントし、葉群の空間分布構造を明らかにした。供試木のうち3個体について、樹冠上層(地上高14m)、樹冠下層(同12m)、樹冠下に着生している後生枝、計3層から測定葉を選定した。03年5月から04年11月までの着葉期間に葉およびシュート伸長等のフェノロジーを観測し、携帯型光合成測定装置(LI-6400, 米国Li-Cor社)を用いて、光強度,二酸化炭素濃度、温度をそれぞれ段階的に変化させて光合成速度を測定し、パラメタリゼーションを行った。林内微気象は、光センサーおよび温度センサーにより林冠上、中、下層の日変化をモニターし、相対湿度は森林総研構内の気象データを用いた。測定葉の光環境は、葉の真上で撮影した全天空写真から開空度を求め、PPFDに変換した。04年には自然状態での環境要因(温度、相対湿度、葉内二酸化炭素濃度)に対応した光合成の日変化も測定した。葉内二酸化炭素濃度と光合成速度の関係(A-Ci曲線)から、光合成パラメータVcmax、Jmax、Rdの2年間の季節変化を明らかにした。また、光合成パラメータと環境要因から個葉光合成速度の日変化をシミュレートし、実測値との比較検討を行った。さらに、葉群構造を用いて林冠光合成生産へのスケーリングを行い、時空間的変動について解析した。

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© 2005 日本生態学会
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