森林におけるCO2フラックス及び炭素収支を評価する上で、葉群構造、林分密度、個体サイズ分布等は少なからず影響を及ぼす。葉の占める割合が相対的に大きければ、光合成量が呼吸量を大きく上回るであろう。同じ葉量でも、生理的ストレスによって光合成能力が低下する場合もあり得る。また林冠や個体サイズ等の幾何学的構造もCO2フラックスを変化させ得る。 森林への炭素吸収量を評価するため、現在、複雑な森林の構造的な特徴と環境要因による光合成や呼吸などの生理的応答を組み込んだ統合的なモデル化を進めている。個体サイズ分布によって変化する、林冠(葉群)構造、非同化器官(枝・幹)の重量や表面積分布の推定方法を提示する。さらに、立木密度を加味した林分成長モデルによって、各器官(葉、枝、幹、根)のバイオマスとその垂直分布構造の推定を行う。こうして得られる林分構造モデルをベースにして、同化器官である葉群を空間配置することができる。 そして群落内部のCO2フラックスを規定する光合成および呼吸消費については、Farquhar型プロセスモデルを利用して葉群の光合成・呼吸を推定し、木部呼吸については木部表面積の推定式をもとに森林スケールの呼吸量を推定する。継続的にモニターされている気象データを与えることによって、森林のCO2収支について、既存のNPPデータとの比較検討を行い、林分密度の違いが葉群構造に及ぼす影響、それに伴う光合成パラメータの変化等、林分構造と森林動態がCO2収支に及ぼす影響を検討する。