日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: G207
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ナンキンハゼの雄性先熟個体と雌性先熟個体における性投資の違い
*千田 雅章名波 哲伊東 明山倉 拓夫
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抄録

ナンキンハゼは単性雌雄同株の落葉樹である。その花は花序を形成し、花序の付け方に2タイプある。そして個体によってそのタイプが決まっている。一方は枝の末端に雄花と雌花から成る花序をつける。このタイプの個体では雌花が咲いてから雄花が咲く(雌性先熟)。他方は枝の末端に雄花のみからなる花序をつけ、その雄花が咲いた後その基部からさらに新しく短いシュートを数本伸ばしその先端に雄花と雌花から成る花序をつける。このタイプの個体では枝の先端にまずつく雄花が咲き、その後短いシュートの雌花、雄花の順に開花する(雄性先熟)。本研究ではナンキンハゼの繁殖に注目し調査を行った。1)開花フェノロジーを見ると雄性先熟個体の雄花と雌性先熟個体の雌花、雄性先熟個体の雌花と雌性先熟個体の雄花の開花期はよく同調しており、個体内での雄花と雌花の開花期の重なりはともに非常に少なかった。2)雄花数と雌花数の比率を雄性先熟個体と雌性先熟個体で比べると、雄性先熟個体の方が雌花数の比率は高かった。3)奈良県御蓋山に生育するナンキンハゼの野生個体群について胸高直径が5cm以上の個体の開花を観察すると、未開花、雄花のみ、雄性先熟、雌性先熟の4タイプの個体が見られた。それぞれのタイプ間で胸高直径を比較すると、未開花個体と雄花のみの個体は雄性先熟個体と雌性先熟個体に比べて有意に小さかった。4)胸高直径に基づき大小2つのクラスに分けると、未開花個体、雄花のみの個体はサイズが大きくなるとその個体数が減少した。また小さいサイズクラスでは雌性先熟個体の方が雄性先熟個体に比べて個体数が有意に多かった。しかし大きいサイズクラスではその偏りがなくなった。雌花の比率が高い雄性先熟個体は雌性先熟個体に比べ繁殖コストが高いと思われる。よって雄性先熟個体として開花できるサイズの閾値が、雌性先熟個体よりも大きいのかもしれない。これが小さいサイズクラスにおいて雌性先熟個体に個体数が偏っている一因になっていると考えられる。

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© 2005 日本生態学会
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