日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S6-2
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トガリネズミ類の歴史生物地理
*大舘 智志
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抄録

北海道を中心に中期更新世以降の北東アジアにおけるトガリネズミ群集の成立史を推定した。北海道に生息する4種のトガリネズミと近縁種についてミトコンドリアのチトクロムb遺伝子による系統地理学的分析を行った。またいくつかの種については核rDNAのRFLP分析とマイクロサテライト遺伝子による集団遺伝学的解析も行った。mtDNAの分析よると、北海道にはまずバイカルトガリとチビトガリが出現し、最終氷期最寒冷期にオオアシトガリが渡ってきたと推定された。ヒメトガリはこの間の時期に複数回の移入があったと示唆された。また現在の分布と古環境の情報により最寒冷期には現在は北海道には生息しないツンドラトガリが北海道の北部東部に移入し、代わりにバイカルトガリが絶滅したと思われた。その後、温暖化に伴いツンドラトガリが北海道から絶滅し、代わりに道南部のrefugiumよりバイカルトガリが北部東部に分布を再拡大したと考えられた。このことはマイクロサテライト遺伝子の分析結果とも矛盾しなかった。さらにバイカルトガリとツンドラトガリは形態、生態が似ていることから、北海道内におけるこれら二種の分布の変遷には環境変化の他に種間競争も関与している可能性がある。一方、本州産の中期更新世以降のトガリネズミ類(Sorex)の化石の形態の分析結果より、本州にはオオアシトガリと近縁なS. isodonや大型の不明種が生息しており、また本州中部産のアズミトガリはかつては本州全域に生息していたことが判明した。これにより中期更新世以降、本州ではトガリネズミ群集の種構成や分布域が減少していることが分かった。以上のように群集の形成過程の推定には系統地理学、集団遺伝学、古生物学、古環境、種間関係などの情報を統合することが必要である。

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© 2005 日本生態学会
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