日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-010
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ブルネイ・マリンブン自然遺産公園における熱帯雨林の動態
*鈴木 英治相場 慎一郎山田 俊弘永野 徹渡辺 名月
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抄録

ボルネオ島ブルネイのツトン地区に、長さ約2kmの浅い湖を中心としたマリンブン湖自然遺産公園がある。湖の周囲は標高20m前後で、微地形に応じて凹地に湿地林、丘状地に低地林がある。50-100年前に焼畑などに使われたと思われる丘の若齢林にP4、丘の老齢フタバガキ林にP1、泥炭層が未発達の若齢湿地林にP3、泥炭湿地の老齢林にP2を、1999-2000年に設定した。各面積は1haで、幹周囲≧15cmの樹木の座標、直径、種名を調べた。2004年まで再測し、4年間の森林動態を解析した結果を報告する。
  種類数は2000年時で、丘の若齢林のP4では175種が出現したが、フタバガキ科は皆無だった。丘の老齢林のP1では225種あった。若い湿地のP3は119種、古い湿地のP2は78種あった。つまり丘よりも湿地は多様性が低かった。また、丘では古い森林で多様性が高かったが、湿地林では逆であった。その後4年間にどのプロットでも、およそ100種当り0.5種が消滅し1種が加わり、種多様性は増加傾向にあった。 優占種はP4でGironniera nervosa、P1はShorea foraminifera、P3とP4はDryobalanops rappaと Dactylocladus stenostachysであった。
 個体数は種多様性とは逆に、湿地が丘より大きかった。主因は林床生ヤシ類の繁茂にあった。丘の若齢林のP4は個体数が4年間ほぼ安定していたが、他の区では減少し、いずれも老齢林の減少が著しかった。胸高断面積合計(BA)も、湿地のほうが丘よりも大きく、老齢林で減少し若齢林で増加していた。
  まとめ:湿地林は丘の林と等しいかそれ以上の現存量を持つが、多様性は1/3程度しかない。老齢林ではBAが減少傾向にあり、森林構造としては最大の発達段階にあると思われるが、種数は増加傾向にあり、種多様性はまだ安定状態とはいえないようだ。

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© 2005 日本生態学会
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