日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-021
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地域農業へのライフサイクルアセスメントの適用-水田地域におけるケーススタディ-
*三島 慎一郎谷口 悟駒田 充生
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抄録

 持続的社会を支える基盤として、持続的な農業生産を行う事は必須の条件である。農業は地域生態系に対し開放して行われる人為活動であり、水質の汚染等を通して自然生態系の撹乱要素となっている。本研究では農業生産が環境に与える影響を包括的にとらえる方法としてLCAを用い、農業での肥料資材利用に伴って発生する環境負荷の度合いを試算したのでここに報告する。 調査地は栃木県南西部の思川集水域とした。環境負荷の指標として水系の富栄養化ポテンシャル、陸域生態系の富栄養化、環境の酸性化、温暖化、重金属負荷をを挙げて、化学肥料と家畜ふん尿の利用/未利用の現状と標準的施肥や低投入農業といった改善案を比較した。 現状の農業に比べて、標準とされる施肥を行った場合には、化学肥料の窒素・リン酸の施用量は大幅に減少し、それに共なって水系の富栄養化ポテンシャルと温暖化が25%程度削減される一方、陸域生態系の富栄養化や酸性化はあまり削減されないと推定された。農地へのカドミウムの負荷は減少するが、亜鉛と銅の負荷が増加するため、全体で見ると農地への重金属負荷は標準とされる施肥では増加する。これらの傾向は、化学肥料の低投入農業を行った場合でも同じであった。 肥料利用に伴う環境負荷を減じる方策としては、標準とされる施肥量を守ることで実現できると推計される部分がある一方、指標によっては効果がないか、逆に負荷が増す場合もあり、どの項目をどの程度許容するかが問題となると考えれられた。

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© 2005 日本生態学会
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