日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-033
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冷温帯Quercus属森林における土壌炭素動態
*大江 悠介熊谷 麻紀子鞠子 茂
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抄録

地球上で2番目に大きな炭素の貯蔵庫である土壌はグローバルな炭素循環において重要な役割を果たしているため、様々な生態系における土壌炭素動態について定量的な研究が進んでいる。好気的な土壌ではCO2放出だけでなく、CH4の吸収機能があり、その吸収量の測定も盛んに行われている。CH4酸化の量はCO2放出に比べると少ないと考えられているが、GWPを考慮した温室効果ガスの収支から生態系あるいは土壌を評価する場合には、CO2およびCH4という2種のガスフラックスについて定量化とガス交換機構を解明することが重要である。しかし、これら2種のガスフラックスを冷温帯のような積雪のみられる生態系で複数年にわたり詳細に調査した研究はほとんどない。本研究では2002年2月から2004年11月の約3年に渡り、野外調査とインキュベーション実験によりQuercus属森林土壌の炭素動態とその詳細なメカニズムを解明することを目的として行った。野外調査の結果、リター層および土壌炭素量は同様のQuercus属森林や日本の黒ぼく土の平均値と比較して小さかった。これは本サイトではササのような林床植生の進入がみられないことに起因すると思われる。土壌CO2、CH4フラックスは地温に依存した季節変動を見せ、地温の推移から推定したCO2放出量はリターフォールとのバランスを考慮すると世界の温帯森林と比較して標準的な値であったが、CH4フラックスは世界の同属の森林で観測された値よりも3-7倍大きいことがわかった。インキュベーション実験の結果からこれは高い土壌CH4吸収ポテンシャルがその原因であると示唆された。また、野外で観測された土壌の低い水分飽和度も高いCH4吸収量が観測された要因の一つであると推測された。

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© 2005 日本生態学会
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