日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-037
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東京湾の干潟の窒素循環特性
*清水 良憲小林 達明犬伏 和之
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抄録

富栄養化した海域において干潟底質が果たす窒素循環機能を評価し,適切な沿岸域の保全再生を検討するため,東京湾の干潟において窒素循環特性を調査した.まず,創出しうる干潟のタイプとして,前浜型と後背湿地型の2型を想定し,両タイプの窒素循環特性を現地調査によって比較した.調査は,2004年の夏期の大潮昼間干潮時に,両タイプの干潟が隣接して存在する葛西,市川,木更津の3カ所で行い,底質の諸理化学性,底生微細藻類クロロフィルa量,全窒素含量,無機態窒素濃度,底生動物バイオマス窒素量,微生物活性,脱窒活性,亜酸化窒素フラックスを測定した.その結果,前浜型干潟の底質は砂泥質で好気的であり,後背湿地型干潟の底質は泥質で嫌気的であるという理化学性の違いが見られた.窒素循環機能は,前浜型干潟では潮干狩り対象の底生動物バイオマス窒素や脱窒速度が高く,窒素の系外除去傾向が見られた.一方,後背湿地型干潟では底生微細藻類や底質全窒素が多く,海水中窒素の同化蓄積傾向が見られた.また,全体として,湾奥海域の干潟では底質中のアンモニア濃度が高くなる傾向が見られた.この原因として,底質の富栄養化及び嫌気化が微生物の硝酸還元反応に影響していることが推察された.次に,干潟の窒素循環機能に対する青潮の影響を把握するため,同年夏期に青潮の襲来を受けた幕張と千葉港の前浜型干潟において同様の調査を実施した.その結果,幕張では底生動物バイオマス窒素が非常に少なく,脱窒活性が著しく高いという異常が見られた.また,千葉港では底質の顕著な嫌気化が観測された.以上の結果から,干潟の窒素循環特性は干潟のタイプによって異なる機能を果たしていると考えられた.一方,青潮の影響による機能低下も示唆され,今後さらなる検討が必要であると考えられた.

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© 2005 日本生態学会
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