日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-040
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スバールバール諸島ニーオルスン氷河後退域におけるCO2 ・CH4 放出量と土壌化学特性
*安立 美奈子大塚 俊之中坪 孝之小泉 博
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抄録

湿性ツンドラの土壌は炭素の吸収源とされてきた。しかしながら、気候変動に伴って炭素の放出源と変わりつつあると報告されている。本研究では、湿性ツンドラの土壌からの二酸化炭素 とメタン の放出と環境要因および土壌化学特性との関係を明らかにすることを目的とした。 スバールバール諸島・ニーオルスンの東ブレッガー氷河後退域において、20m ごとに14地点に密閉法用チャンバーを設置した。2ラインの合計28地点において、真空バイアル瓶を用いて土壌から放出される空気の採取を行った。空気はガスクロマトグラフィーによって濃度を測定して放出・吸収量を求めた。また、空気を採取したのちにチャンバー内の土壌を採土管によって採取し、pH、C/N 比、NO3- 、NH4+ の測定をおこなった。これらの土壌の化学特性に加え、土壌の環境条件(地温、土壌含水率、植物体地上部バイオマス量)などと二酸化炭素 とメタン の放出量との関係について解析をおこなった。 土壌からの二酸化炭素の放出量の平均は104 mg CO2 m-2 h-1であった。一方、メタン を放出していた地点の平均値は0.24 mg CH4 m-2 h-1、吸収していた地点の平均値は 0.18 mg CH4 m-2 h-1となり、全てを平均すると0.07 mg CH4 m-2 h-1の放出となっていた。二酸化炭素 とメタンの放出速度は共にばらつきが大きく、二酸化炭素 の変動率は97%、メタン の変動率は放出系で153%、吸収系で109%であった。二酸化炭素とメタンの放出量には強い正の相関関係が認められた (r = 0.581, p < 0.01)。土壌からの二酸化炭素とメタンの放出量と土壌化学特性および環境要因との関係についての解析結果を報告する。

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© 2005 日本生態学会
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