日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-041
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倒木による水分環境改変が落葉リター分解系に及ぼす影響
時岡 あき子*加賀谷 隆
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キーワード: 枯死材, 材径, 林床, 破砕, 水分
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抄録

 林床上の枯死材は、周辺部の水分条件を改変し、落葉リター分解系に影響を与えていると考えられる。材には、水分貯留および周囲への供給作用や、構造物として枯死材下の土壌からの水分蒸発抑制作用があると考えられる。これらの作用は、恒常的な湿潤環境の形成によりリター分解に正の影響を及ぼすことが予想される。一方、林内雨を遮断することでリター分解に負の影響をもたらす可能性もある。各々の作用の大きさは枯死材の材径や材質によって異なると考えられる。演者らは第50回大会で、倒木直近のL層表面の落葉リターは、材径が大きくかつ腐朽の進んだ倒木直近のリターほど分解が速いことを示したが、倒木の存在自体および材径と材質の影響は分離して評価されていない。本研究では枯死材の有無が落葉リター分解系に及ぼす影響を評価するとともに、枯死材の材径が落葉リター分解に影響する機構を明らかにすることを目的とした。
 東京都八王子市のアラカシ-モミ林で、リター分解実験を2003年12月から2004年9月に行った。長さ、腐朽度が同程度の大径(8から11cm)、中径(3から6cm)の枯死材、および水分貯留・供給作用のない塩ビ製の大径、中径の人工材を設置し、それらの直近および対照区として裸地上に、ケヤキとアラカシのリターバッグを設置した。
 初夏までのリター分解は対照区に比較して大径材の直近で遅かった。大径材では林内雨遮断作用が大きく、溶脱が遅れたと考えられる。夏、秋の土壌動物量は対照区より材の直近で多く、特に大径材、枯死材で顕著であった。秋までのリター分解は対照区に比較して大径枯死材で有意に速かった。枯死材の水分貯留・供給作用に加え、大径材では蒸発抑制作用が大きく、恒常的な湿潤環境を形成した結果、土壌動物によるリター分解が促進されたと考えられる。

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© 2005 日本生態学会
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