日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-054
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特殊な性型雄性両性異株性を示すマルバアオダモ(モクセイ科)のマイクロサテライトマーカーを用いた野外集団の遺伝的構造の解析
*岡崎 純子井上 大輔上野山 雄也石田 清
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抄録

性表現は植物の多様性を生み出す重要な繁殖戦略の一つとなっている。この性表現の中で、雑居性雌雄異株(雌性両性異株・雄性両性異株)は、この進化の過程を明らかにするための鍵となる性型であると考えられている。雄性両性異株性は特にまれな性型で、その維持には、雄の高い繁殖成功度をもたらす交配様式(特に高い外交配率)や近交弱勢、また生育環境に応じた雄株と両性株の繁殖特性の差異といった要因が関与していると考えられているが、実際に雄性両性異株性を示す野外集団を用いて検証された例は少ない。このような交配様式や集団の繁殖構造の解明にはDNAの繰り返し配列部であるマイクロサテライト部位の多型を用いた遺伝的解析の利用が有用であることが多くの植物で報告されてきている。本研究では、モクセイ科の落葉性高木で雄性両性異株性を示すマルバアオダモを材料として、既存のマイクロサテライトマーカーの有効性の判定をおこない、有効であったマイクロサテライトマーカーを利用し、個体群の遺伝子レベルでの空間分布がどのようになっているのか、雄株と両性株の間でその遺伝的な構成の違いがあるのか、混合花粉受粉実験により実生への寄与に性型間での違いがあるのかの調査をおこなった。調査は大阪府柏原市の二次林と和歌山市和歌山大学周辺緑地の二次林の2地点でおこなった。その結果、ヨーロッパのアオダモ属植物に対して開発されたDNAマイクロサテライトマーカー13種のうち、マルバアオダモには3種が有効であることが判明した。この3マイクロサテライトマーカーを用いた解析結果からは、混合花粉での受粉の成功にやや雄株が有利であること、性型間での遺伝的構造の違いがあることが示された。これらの結果から、この植物における性型の維持機構についての考察をおこなう。

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© 2005 日本生態学会
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