日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-058
会議情報
林床光環境の空間特性とHopea ferrea実生群動態
*梶原 嗣顕神崎 護ワチャリンラット チョングラック
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

森林の林床光環境は実生の生存を規定する重要な要因の1つである。その空間的,時間的な分布特性を明らかにし、林分構造がどのように光環境を規定しているのかを解明することは、森林の更新機構をより動的に理解する上で重要であると考えた。そこで、タイの熱帯季節常緑林の2.5 ha調査区内で、全天写真を用いて林床光環境(Global Site Factor:GSF)の空間分布とその季節性を明らかにし、林分構造との相関を解析した。また、Hopea ferrea当年生実生群の動態に対するGSFの影響を明らかにすることを試みた。
調査区内に設定した450mのライントランセクト上 で1 m間隔に地上0.6 m(下層)と1.4 m(上層)で全天写真を撮影した。GSFは、乾季が雨季より有意に明るく季節性が認められ、地上1.4 mよりも下層の0.6 mのほうが有意に明るかった。また、樹冠高10 m以下のギャップ部分の林床では、GSFは有意に低くなっていた。セミバリオグラムで求めたGSFのレンジ(自己相関の及ぶ範囲)には季節性は無く、下層が10 m、上層が20 mで、下層のほうが小さなスケールで変動していた。GSFは小径木(DBHで40 cm未満)の現存量とは負の相関、大径木(DBHで40 cm以上)および落葉樹とは正の相関が見られた。GSFと実生の死亡率との間には直接の相関はみられなかったが、ギャップ内での死亡率は、他の林分に対して有意に高くなっていた。

著者関連情報
© 2005 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top