日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S7-4
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遺伝子組換え作物から在来近縁野生植物への遺伝子浸透過程のモデル解析
*嶋田 正和
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抄録

近年、遺伝子組換え(GM)作物が続々と開発されているが、GM作物による生態系の生物多様性への影響をリスク評価する必要性が高まり、わが国では2004年2月からカルタヘナ法の施行となった。特に、交雑性の問題は、GMダイズからツルマメへ、あるいはGMセイヨウナタネから在来アブラナへの遺伝子浸透が懸念され、生物多様性に意図しない悪影響を与える可能性が無視できない。しかし、現段階では広域・長期的データはなく、モデルを使った遺伝子浸透の先行研究ですらも(Haygood et al. 2003)、遺伝的浮動の影響をきちんと評価したものはまだない。よって本研究では、GM作物から近縁野生植物へ、交雑を経て導入遺伝子が野生植物のゲノムに取り込まれた後、どのように局所集団での遺伝的浮動による固定・消失を繰り返し、さらに近隣の局所集団へどのように伝播していくかを予測するモデルを構築した。 2次元セル状構造のメタ個体群系を考え、各局所集団内では、遺伝的浮動と自然選択の効果を取り込んだKimura(1967)の反応拡散方程式(中立説で使用された)で遺伝子頻度を計算した。花粉流動による局所集団間の遺伝子伝播は、近隣の局所集団にstepping-stoneの移動で広まると仮定した。問題としている導入遺伝子が、(i)完全に中立な場合、(ii)選択的に1%有利な場合、(iii)選択的に1%不利な場合、の3つに分けて予測を行った。その結果、選択的に1%の有利・不利を与える場合は、完全に中立な場合に比べて、遺伝子浸透による拡大パターンに差が生じた。これらの予測をもとに、今後、自然生態系においていくつかの植物種で遺伝子浸透の実態調査が進められるが、どのようなデータが必要となるかを考察した。

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© 2005 日本生態学会
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