日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-076
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タイ国パンガ県パンジー川におけるSonneratia albaAvicennia albaの立地環境の相違
*大谷 真弓早坂 大亮藤原 一繪中村 武久
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抄録

 マングローブ林は熱帯林以上に二酸化炭素固定能力もつことが報告されている(松村, 2002; 須田, 2002)。汽水域の厳しい環境条件によりリターの分解が抑制され、炭素の貯留場所として重要な場となっている。
 Sonneratia albaAvicennia albaは、マングローブ林汀線最前面に生育する。マングローブ林最前面は、後背部からの土壌の流出を防いだり、波浪の影響を緩和したりと環境保全林の役割を果たしている。前面群落を保全することは、マングローブ林全体の保全につながり、さらにそれは二酸化炭素固定の場を保全することになる。
 S. albaA. albaについての先行研究は、特に日本の研究者によるタイ国マングローブ林における群落単位の決定(宮脇ら, 1985)、S. albaの耐塩性についての研究など(Wakushimaら, 1994)、また海外の研究者による、塩分濃度の違いによるS. albaの成長量の違い(BALL et al, )などがある。しかし、S. albaA. albaの立地環境の相違について解明した研究はこれまでにない。マングローブは地盤高の違いによる冠水頻度、時間などによりその生育地が限定されるが、二種の生育地は非常に類似している。
そこで本研究では二種の立地環境の相違を明らかにすることを目的として、2004年9月にタイ国パンガ県パンジー川流域で調査を行った。河口部から上流域にかけて調査区を3つ設け、毎木調査、実生調査、植生調査、及び立地環境調査を行った。
その結果、S. albaA. albaは実生の定着サイトに違いがあることが明らかになった。S. albaの実生はギャップ下で、かつ微地形レベルでの地盤高の等高線が密なサイトに定着し、A. albaはギャップ下にも生育することがあり、微地形レベルでの地盤高の等高線が疎であるサイトに定着していることがわかった。

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© 2005 日本生態学会
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