日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-080
会議情報
イシマキガイの小河川における集団遡上と移動分散様式
*小林 哲岩崎 敬二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 福岡県古賀市の小河川中川(全長約4km)において,イシマキガイの移動分散様式を調査した. 2003年5月,淡水域中流部(河口から1.5km)で多数の個体が遡上しているのが確認された.遡上個体は殻幅7.9-16.9mmであり,8.5-12mmが80.6%を占め(全262個体内),モードは9.5-10.0mmであった.遡上は列をなしており,先行個体に後方個体が追従する行動がみられた.5月4日に標識放流した個体(83個体)は,1日後10-33m(35個体),8日後33-106m(31個体),13日後 99-146m(5個体)遡上したのが確認された. 次に感潮域上部から淡水域下流部にかけての約400mの範囲(河口から約500mより上流)の5定点(上流に向けてAからE)で,2003年4月から2004年4月にかけ2ヶ月ごとに,殻幅約8mm以上の合計約1500個体を個体識別後標識放流し,1m単位の移動を2004年10月まで追跡した.また2003年7月から2004年11月の間2ヶ月ごとに,50cm四方のコドラート採集を各定点周辺で10回行った. コドラート調査では,9-10月に感潮域上部定点 AからBに着底した新規加入個体が,翌年5月に淡水域CとD,7月にはEに出現し,積極的な遡上が読みとれた.同時に,5月にはこれら0歳群の個体(殻幅3-9mm)が列をなし遡上する行動も観察された.また標識放流(おもに1歳以上の個体)によると,冬季(12月-2月)はほとんど移動がなく,春から秋にかけて様々な程度の移動が確認された.流下と遡上両方が確認されたが,全体としては遡上が勝っていた.感潮域では感潮域内に留まる個体も多かったが,淡水域では積極的に移動する個体が多くみられた.移動距離も様々であったが,1ヶ月に200m以上遡上したものも含まれており,イシマキガイの感潮域から淡水域にかけての広い分布を反映するような,積極的な遡上による分布拡大が確認された.

著者関連情報
© 2005 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top